2012年2月26日日曜日

農家の手取りは下がり、消費者の食費は上がる

アメリカで、消費者が食べるために費やす金額(実線)は上がり、農家が得る金額(点線)は下がり続けている。
農家の手取りはもろく崩れやすいのに、消費者が支払う小売価格は上がることはあってもねっとりと価格を維持する。

その間の儲けはだれが?


2010年に行われたPeter Rosset氏の講演より。
講演はこちらから視聴できます(英語)
“The World Food Crisis: Causes and Solutions” by Peter Rosset
http://vimeo.com/16561267

自由貿易によって、メキシコのトウモロコシ農家は一掃され、市場でのトウモロコシ価格も安くはならず、結局、農家も消費者も大変な目にあったことを紹介しています。

Rosset氏は以前から『World Hunger』などで、世界飢餓について発言している方です。

2012年2月14日火曜日

食の生産から消費までを縦に支配する

世界の食は今、なにが問題なの?
一言で答えるなら、片手で数えられるほど数少ない企業グループが、世界の食の大部分を生産から消費まで縦にコントロールしていること。

生産者も消費者も星の数ほどいるけれど、
その間の流通や加工の段階で、ほんの3〜5社が市場の大部分を管理する。
するとその首根っこを押さえる数社が、どんな「食品」をどうやって生産するか、生産から消費までをコントロールすることができる。
リスクは生産者と消費者に残したまま。

その構造は砂時計の形。
ボトルネックといわれる、きゅっと締まったところを握る数社が全体を支配するというわけ。

たとえばブラジルからヨーロッパに輸出される大豆の場合、
加工の段階で3社が市場の8割を占めているから、
20万人のブラジル農民はこの3社が望む大豆を望まれる通りに生産するしかない。
もっと大勢のヨーロッパの消費者は、この3社の都合に合わせた大豆製品を食べることになる。

その結果、農民はどうなる?
指定されたハイテク種子を買うために借金して、
指定された化学肥料や農薬を与えるためにまた借金して、
指定通りに生産できなかったら借金だけが残って、
土地は取り上げられて、借金だけが増えて、、、

以前、高校生向けに作ったスライドより。

大豆だけじゃなくて、他の穀物や肉やいろんな食品分野で、この首根っこがますます細くなっているのが、今日の世界の食料事情。

【参考文献】
邦訳された『肥満と飢餓――世界フード・ビジネスの不幸のシステム』に詳しく紹介されてます。

砂時計モデルの元資料(英語)。今度この著者がゲストスピーカーで来てくださるそうです!
「Food inc: corporate concentration from farm to consumer」
http://www.ukfg.org.uk/docs/UKFG-Foodinc-Nov03.pdf

2012年1月1日日曜日

ロンドンの新年花火

ロンドンの新年花火の映像です。
ビッグベンの鐘とともに火花が吹き出してる!
約25万人が繰り出したそうです。

2 fireworks in London and Edinburgh
http://www.bbc.co.uk/news/uk-16376296
London's new year fireworks set to music
http://www.bbc.co.uk/news/uk-12101999

追記:11分間の完全版映像がアップされてました。
とにかくボンボン打ち上げる打ち上げる(笑)
http://www.bbc.co.uk/news/uk-16378725

元旦は強めのミルクティーで寝不足頭を起こして、勉強勉強。
5日・6日の「Oxford Real Farming」カンファレンスに行きたいから、それまでに仕上げないと!

まだ1文字も書けてませ〜ん。

Best Wishes for a Happy New Year!

新年明けましておめでとうございます。

新年は花火とパーティーで迎えるのがロンドンの習わしですが、
花火を見に行こうと誘ってくれた友人もいましたが、
激動の2011年は近くの教会の「Watchnight Service」で見送りました。

夜11時から始まった大晦日の礼拝で、神父さんが2011年のできごとを丁寧に振り返ってくれたし、
もちろん日本の震災のことも。
それから蝋燭に火をともして去りゆく年の悲しみを思い、
照明を落として深夜を待ち、
2012年になったとたん、周りの人みんなにハッピーニューイヤーと握手して新年を迎えました。

それから何やらみんなで教会一杯の1つの輪になって、
手をつなぎ「Auld Lang Syne」を大合唱。
教会で「蛍の光」を歌うとは思わなかったから、歌詞を確認しそこなってました。
外に出ると煙が立ちこめていて、
ここって花火会場の川辺からずいぶん離れているはずなのに。

白夜のように薄明るいロンドンの夜道を歩きながら、
過ぎた年を思い、新しい年を迎え、
初日の出は見られそうにないので、夜空に浮かぶ教会のシルエットに手を合わせました。

ふと「乾杯」の歌が聴きたくなってYoutubeにて演奏。
学生時代にこの歌を思いながら見た知床の夕日を思い出しました。

2012年が良い年でありますように。乾杯!

2011年12月31日土曜日

もし多くの小さな人たちが(アフリカのことわざ)

数年前から気になっていたIAASTD報告書(2008年)を今さらですが図書館から借りだしてきました。

国際機関の最高峰に近い科学者たちがまとめた
『開発のための農業科学技術の国際的評価(IAASTD)』

サイトから全文デジタルでダウンロードもできますが、ぶ、分厚い。。
http://www.agassessment.org/

報告書のタイトルは「岐路に立つ農業(Agriculture at a Crossroads)」
EICネットのまとめにも「現在のままであれば資源を浪費し、子供達の未来が危ぶまれるとして、方向転換に向けて直ちに行動すべきだと結論づけた」と紹介されてます。
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=18431

農業を大規模化するべきとか、国際競争力をとか、ニュースで耳にする方向性は、
世界の潮流から見たらすでに時代遅れ?

もっともこの報告書を受け入れなかった国の顔ぶれに
アメリカ、カナダ、オーストラリア。

農業に関する知識と科学と技術を歴史的に見直した章の最後に紹介されていたアフリカのことわざを目がとまりました。
もし多くの小さな人たちが、あちらこちらの小さな場所で、それぞれの小さなことをがんばれば、きっと世界を変えることができるだろう(緑の意訳)
If many little people, in many little places, do many little things, they will change the face of the world (p. 225)
小さな小さな私も、私にできるところでがんばろうと思いつつ、
新しい1年はより良い世界となりますように。

2011年12月17日土曜日

アメリカ農民の声「フードシステムを占拠せよ!」

アメリカ・ウイスコンシン州の農民の声をざっと訳しました。
「今日のフードシステムは機能していない。一部の人は食べ過ぎで、一方ではお腹を空かせた人がいる。食卓には加工食品があふれていて、新鮮な食べもの、栄養たっぷりの食べもの、地元で育った食べものを購入できない人が多くいる。これが『アメリカ株式会社』が俺たちに与えたフードシステムだ。その延長線上で同じフードシステムを世界に押しつけている。

ごらんの通り、このフードシステムは人々の健康を第一に考えていない。農家や農場労働者や家畜や環境のことを考慮してもいない。今日のフードシステムの目的は一つ。利益を上げることだ。」
Jim Goodman氏「 Occupy the Food System:The world can feed itself, without corporate America's science-experiment crops and expensive chemicals」2011年12月12日 原文 http://www.otherwords.org/articles/occupy_the_food_system

アメリカは今、世界最悪の肥満大国。
子どもの平均寿命が親より短くなった国。
そして家族農家が次々と消えている国です。

2011年12月16日金曜日

肥満は貧困と安い加工食品が問題

ジャンクフードや加工食品を食べて不健康になるのは、モラルや教育不足の問題ではなく、純粋に経済的な選択なのだと。
今の世の中、ファーストフードや加工食品の方が安くなる経済構造になっているから、貧しい人を中心に肥満などの生活習慣病が増えているのだと。

こういう意見がようやく大手メディアにも取り上げられるようになったようです。
ガーディアン紙「肥満はモラルや精神力の不足ではなく、貧困と安い食品の問題だ」
The Guardian 2011/12/14 "Obesity is about poverty and cheap food, not a lack of moral fibre"
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/dec/14/obesity-diabetes-cheap-food-poverty

それでもイギリス政府は「食生活に気をつけてもっと運動するべき」と繰り返してますけどね。

WE FEED THE WORLD 2005ありあまるごちそうより

「貧しい国民ほど安価で手に入るジャンク・フードや加工食品に依存してゆくからだ。経済的弱者がそれらの産業を潤わせるアメリカで、「貧困」と「肥満」は同義語になりつつある」堤未果『ルポ貧困大国』より

過去ログ「日本の食は8割を外食と加工品に」も併せてご参照下さい。